「脂質ってなに?」身体に大切な脂質・コレステロール・脂肪酸のヒミツ

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★脂質・脂肪・脂肪酸・コレステロールの違いは?

 

脂質、脂肪、脂肪酸、コレステロール・・・

「どれもよく聞く言葉だけど、違いがわからない…」

という方は多いのはないでしょうか?

「全部身体に悪いものでしょ!」と思われている方もいるかもしれません。

結論から言うと、そんなことは全くありません!

まずは正しく違いを理解をして、どういったものが身体に良いのかを整理していきましょう。

 

一つ一つの説明は後からするとして、まずは全体像を図で理解してみましょう。

脂質は、水に溶けず有機溶媒に溶ける物質の総称です。

体内に存在する脂質は、上図の通り『中性脂肪(= 脂肪)』、『脂肪酸』、『コレステロール』、『リン脂質』の4種類となっています。

〜脂質〜

〈エネルギー〉

糖質やタンパク質が1g当たり4kcalのエネルギーを持つのに対し、1g当たり9kcalと、2倍以上のエネルギーを持っている。

〈役割〉

  • 細胞膜の主要な構成成分
  • エネルギーを貯蔵する
  • 脳や神経の細胞の構成成分
  • ホルモン合成の材料

など

 

脂質の役割は、つまり中性脂肪・脂肪酸・コレステロール・リン脂質の役割をまとめたものです。

中性脂肪は、主にエネルギー源として使われていて、リン脂質は細胞膜の主成分です。では残りの『コレステロール』、『脂肪酸』はどういった役割を担っているのでしょうか?

 

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★コレステロールってなに??

 

まずコレステロールにはどんな役割があるのでしょうか?

大きく分けてコレステロールには3つの役割があります。

 

コレステロールの3つの役割

①細胞膜の材料になる

私たちの体は約60兆個もの細胞から成り立っていて、コレステロールはその細胞の膜を構成する大事な成分。

②ホルモン(副腎皮質ホルモン・性ホルモン)の材料になる

副腎皮質ホルモンは、ストレスを受け、水分の調整が必要な時に分泌するホルモン

③胆汁酸(消化液)の材料になる

胆汁酸は脂肪の消化吸収を助ける働き

1日に必要なコレステロールの量は1~2gで、そのうち約7割を肝臓など体内で合成しています。

そして残りの3割を食事から摂取しています。

そう、食事から摂取しなくてはならない量は実は3割程度にすぎないのです。

以前は食事によるコレステロールの管理が重要視され、食事摂取基準で数値の目標が定められていました。

しかし、前述の通り、コレステロールの2/3程度は肝臓で合成されていることがわかり、食事中のコレステロール量は血液中のコレステロール値にあまり影響しないとされ、2015年の摂取基準には目標量の設定がなくなりました。

 

では摂取しすぎた場合はどうなるのでしょうか?

体が正常な場合は、コレステロールを一定量に調整する機能が働いているため、食事で多くのコレステロールを摂取すると、体内で生成するコレステロールの量を減らしています。

通常食事3割、肝臓7割というバランスですが、食事で5割摂取した場合は、肝臓で5割に減らすといった具合です。

しかし、あまりにも摂取量が多すぎたり、高齢になるにつれ、コレステロールを一定量に調節する機能が働かなくなり、血液中のコレステロールが増加してしまいます。

「???」

「血液中のコレステロールって何となく身体に悪いって聞いたことあるけど、何で悪いんだろう?」

この問いに明確に答えられる人は少ないと思います。

ではここから先は、コレステロールの話で避けては通れない、『善玉コレステロール』、『悪玉コレステロール』について説明していきます。

悪玉コレステロール・善玉コレステロール

〜悪玉コレステロール(= LDL (Low Density Lipoprotein))〜

役割:コレステロールの運搬役。血液から全身にめぐって運ばれる。

血液中のコレステロールが大量に増えると、使われなかった分は血液中に残る。それが酸化する動脈硬化の引き金になる

 

〜善玉コレステロール(= HDL (High Density Lipoprotein))〜

役割:コレステロールの回収役。血液中に残ったコレステロールを回収して、肝臓に運ぶ。

回収されたコレステロールは、ホルモン、胆汁酸の材料になったり、不要な分は排泄される。

 

こういった役割の違いから、増えない方が良いLDLが「悪玉」、血液中に残ったコレステロールを回収してくれるHDLが「善玉」と呼ばれたんですね。

ただここで注意しておいていただきたいのは、LDLが悪いわけではなく、酸化したコレステロールが悪者であるということです。

では酸化したコレステロールにだけ気をつければいいのかというと、結論YESですが、その部分だけ気をつけるというのはなかなか難しいのが実情です。

ここからは、コレステロールについて考える上で認識しておくべき指標・数値について説明します。

 

コレステロールの基準値・LH比・酸化悪玉コレステロール

 

〜コレステロールの基準値~


HDL(=善玉)が80mg/dL以上の方は動脈硬化になりづらい、そして動脈硬化が引き起こす病にもなりづらいと言われています。

ちなみにLDL(=悪玉)が140mg/dL以上の方は高LDLコレステロール血症、HDLが40mg/dL未満の方は低HDLコレステロール血症と診断されます。

 

しかし基準値はあくまで上図のようになっていますが、基準値以内でも動脈硬化になることが確認されています。

ではどう判断したらいいのか?

そこで次に登場する『LH比』、LDLとHDLのバランスを表す数値です。

LH比を考えるのは、LDLとHDLの役割をしっかり把握された皆さんであれば、「当たり前じゃん!?」と思うかもしれません。

そう!そこまで思えていたら、あっぱれです!

ただLDLとHDLの役割を忘れた方は、もう一度下の表で確認してくださいね。

 

〜悪玉コレステロール(= LDL (Low Density Lipoprotein))〜

役割:コレステロールの運搬役。血液から全身にめぐって運ばれる。

 

〜善玉コレステロール(= HDL (High Density Lipoprotein))〜

役割:コレステロールの回収役。血液中に残ったコレステロールを回収して、肝臓に運ぶ。

 

『運搬』と『回収』という逆の働きをするものなのですね・

『入』と『出』、『プラス』と『マイナス』のように拮抗的に働くものだからこそ、それらの比をとってバランスをみる必要があるわけですね。

家計に似ているかもしれません。いくら給料が良くても、そのお金を湯水のように使ってしまい、給料以上を毎月使ってしまったら、家計は火の車になりますね。

では具体的にLH比の計算方法とその適正数値を見てみましょう。

〜LH比の計算方法〜

LDL ÷ HDLで求めた値

(例)LDL 120 mg/dL  HDL 40mg/dLの場合

LDL ÷ HDL = 120 ÷ 40 = 3.0

〜LH比の数値〜

  ~1.5:血管内はきれいで健康な状態

1.5~2.0:要経過観察

2.0~2.5:コレステロールが血中に増加している。動脈硬化の疑いあり

  2.5~:血栓ができている可能性あり。心筋梗塞に至る場合も

 

もしLH比が高い場合は、『酸化悪玉コレステロール』についても調べた方がいいです。

なぜか分かりますか???

そうです!血液中にコレステロールが残っていることも問題ですが、何より問題なのは『血液中に酸化したコレステロールがある』ことだからです!

 

それを酸化悪玉コレステロールと呼んでいます。

酸化悪玉コレステロールが血管の壁に入り込んで、プラークを作り、動脈硬化が進行し、心筋梗塞などの引き金になります。

では酸化悪玉コレステロールはどのように生じるのでしょうか?

パターンは2つあります。

  1. 血液中のコレステロールが酸化する
  2. 酸化したコレステロールを摂取する

の二つです。

では①から見ていきましょう。

①の原因は、

喫煙・内臓脂肪過多・高血糖・糖尿病・老化・ストレスなどです。

高血糖・糖尿病の及ぼす悪い影響はここにもありましたね。

高血糖の方の栄養対策についてもまとめていますので、詳しくはこちらを見てみてくださいね。

血糖値が高い!?糖尿病の症状・原因・栄養対策

2017.10.06

 

②については、どういった食品が酸化したコレステロールを含んだものなのか見てみましょう。

  • レトルト食品など、長期保存した物
  • マヨネーズやバターの劣化部分(濃い黄色に変色した部分)
  • 天日干しした干物(空気に長時間さらされた物)
  • 肉や魚の焼き焦げ部分
  • 何度も揚げなおした天ぷらやフライ
  • 電子レンジなどで何度も温めなおした食品

 

こういった食品を摂取するのをゼロにするのは難しいですが、できる限り避けるようにしましょう。

もし摂取してしまった場合は、抗酸化作用のある栄養素(アスタキサンチン・ポリフェノール・βカロテン・リコピン)を合わせてとるようにしてくださいね。

 

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★脂肪酸ってなに???

 

脂肪酸の体内への影響は構造で決まる!

 

脂質の質は脂肪酸で決まるとも言われていて、脂肪酸の体内への影響は脂肪酸自身の構造によって異なります。

少し化学の話も入りますが、あとで噛み砕いて説明しますのでちょっとついてきてください。

脂肪酸は、炭素(C)の二重結合の有無、そしてその数と位置により、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。

飽和脂肪酸は二重結合を持たない脂肪酸で、不飽和脂肪酸は二重結合をもつ脂肪酸です。不飽和脂肪酸はその構造により、n-9系、n-6系、n-3系の3種類に分かれています。

ω(オメガ)9系などと呼ぶこともあります。

高校で習う有機化学を知っている人は、「ふむふむ、なるほど!」と感じますが、化学なんてちんぷんかんぷんと言う人は、先ほどの話は意味不明でしょう。

ですので、簡単に図で説明します。

                            飽和脂肪酸のパルチミン酸

(Jオイルミルズ企業サイトより引用)

 

脂肪酸はこの図の通り、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の原子が組み合わさってできています。

そして飽和脂肪酸というのは、炭素(C)と炭素(C)の間が1本の結合で結びついているものです。

不飽和脂肪酸のオレイン酸

(Jオイルミルズ企業サイトより引用)

 

不飽和脂肪酸のリノール酸

(Jオイルミルズ企業サイトより引用)

 

一方、不飽和脂肪酸は、炭素(C)と炭素(C)の間が2本の結合で結びついているもので、どの場所に2本の結合があるかでn-○系が決まります。

例えば上のオレイン酸であれば、9番目の炭素で二重結合があるためn-9系と呼ばれていて、下のリノール酸は6番目の炭素で二重結合があるためn-6系と呼ばれています。

炭素間の二重結合が一つの脂肪酸は一価不飽和脂肪酸、二つ以上のものは多価不飽和脂肪酸と呼ばれています。

 

脂肪酸の摂取基準量

 

食事摂取基準では、飽和脂肪酸は目標量、n-6系・n-3系脂肪酸は目安量がそれぞれ設定されています。

○飽和脂肪酸

18歳以上の目標量:1日に摂取するエネルギーの7%以下

 

脂肪酸の種類と働きまとめ!

 

脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられ・・・

といった説明をしましたが、なかなか難しいものでしたね。

以下では、食品の例や働きも合わせて、図で全体を説明します。

この図を使ってどういった食品を摂取すればいいのか、使ってみてくださいね。


*n-3系・n-6系脂肪酸は体内で合成できないか、または必要量が合成されない。

そのため食物から摂取する必要があるので、必須脂肪酸と呼ばれる。

「人間の体は食べたものからできている」

という言葉があるくらい、日頃摂取する食べ物は大切です。

中性脂肪・リン脂質・コレステロール・脂肪酸の働きを理解した上で、日頃の食生活を意識して変えていってみてくださいね。

 

(参考)足立香代子「栄養学の基本がまるごとわかる事典」2016年(西東社)


決定版 栄養学の基本がまるごとわかる事典

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