「アルバイトの平均勤続年数10年!」社長主導のスタッフ教育で、人を活かした店舗運営を 〜大西商事有限会社 大西代表インタビュー〜

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商売を覚えるために、大阪で就職活動を

愛知県の東海高校を卒業して、慶應義塾大学に入学。大学卒業後は実家のアパレル会社を継ぐためにRENOWNというアパレル企業に入社しました。RENOWNは東京に本社があるため、慶應にいた私にとっては就職活動は同じ東京ということもあり、移動距離は近いものでした。しかし、実家の会社を継ぐことを考えたら東京で仕事をするよりも、大阪で仕事をした方が商売を覚えるのではないかと思い、わざわざ大阪まで入社試験を受けに行きました。大阪の人はコミュニケーションが上手で、商売が上手そうなイメージがありましたから。

Renownで3年半くらい修行しました。接客術自体は自分自身レベルが高くないと思っていて、一緒に経営している妻がすごいと思っています。Renown時代に知り合ったのですが、社長賞をもらうくらいのレベルでした。やっぱり接客で難しいのは、「普通に話す」ことなんですね。無理に売ろうとしてはいけない。売ろうとせずに要望を把握することが大切なんですね。アパレルの場合は、事前に何を買うかというのは決まっていないことが多いです。だからこそ「普通に話す」ことで、お客様の要望を聞き出すことが重要になってきます。無理に売ってしまうと次に繋がらないので、私たちの会社では売上のノルマは作っていません。1回買ってもらうことよりも、次に来てもらうことが大切です。

〈RENOWN企業サイトより引用〉

 

経営で苦しみ、事業転換。でもそこでチャンスが生まれた。

Renownで勉強した後、専務という肩書きで実家の会社に戻りました。自分より年上の方ばかりでしたが若い力で頑張ろうと思ったのを覚えています。大西商事は創業60年で最高店舗数は8店舗。私が会社に入ったときは4店舗で、入ってからすぐに1店舗増やして5店舗で運営をしていました。バブル時代は1店舗あたり少なく見積もっても3億円程度の売上がありました。しかしバブルが弾けて2店舗を閉め、3店舗で経営をしていましたが、その内の1店舗も運営がうまくいかなくなり、閉じることになりました。当時はバブル後の不況というのもありましたが、苦しかったですね。そこで今後の事業について考え直しました。

店舗運営をしている時に、お客様から言われていた要望を思い出すと、「大きいサイズはないか?」と言われることが多かったんです。そこでビッグサイズをやっている店を見たりしましたが、商品のレパートリーが少なく、ファッションを楽しめるものではなかったんです。

そこで2012年にビッグサイズに一部事業転換しました。それが現在の大須店になっていますね。大須店のコンセプトは『あってよかったと言われる店になりたい』です。ビッグサイズはそもそも扱っている店が少ないですし、かつレパートリーも少ないからこそお客様にあってよかったと言われる店になりたいと思っています。仕入れに関しては、もちろん最初は初めての業者ばかりで信頼関係を作っていくところからスタートでしたが、その分他の仕入れ方法も考えることができましたね。自分で海外に直接仕入れに行き、1点物をどんどん棚に陳列しバリエーションを増やしています。NYでよく仕入れをするのですが、面白いですね。こんな商品あるのかと。おかげさまでTV局の衣装を担当されている方が、芸能人の衣装として買いに来てくださることもありました。

〈大西商事Facebookより〉

そしてもう1店舗の豊田店は『ファッションで笑顔と感動を』です。こちらは豊田にあるイオンの中に入っていて、紳士服を扱っています。男の人は服を買う時には、何かきっかけがあることが多いと思っています。例えば同窓会とか転職とか。そういう時にうちの服を着て写真撮影とかしてほしいなと。そして記念すべき時にうちで買った服を着てほしいと思っています。

背中で見せるだけでは足らない。大学時代の反省を元にした社員教育

現在の社員教育は慶應義塾大学在学時の反省を元にできています。私は慶應義塾大学在学時代に体育会バドミントン部に在籍していました。大学4年の時にはキャプテンを任されていましたね。私たちの同期にはインターハイで優勝した、といったいわゆるスター選手はいなかったため、とにかく練習を徹底して行なっていました。「練習の慶應」なんて言われていましたね。ただ後ろを振り返った時に、ついてきていない人が多くて悩んだのを覚えています。実際、私のことが嫌いで辞める人もいましたし、直接「大西さんとバドミントンはできない」と言われたこともありました。練習が厳しすぎて、プライベートでは誰も寄ってこなかったですね。

4年生でキャプテンとして引っ張っている時に、同期からこんなことを言われたんです。「こんなことをやっていても誰もついてこないよ」と。その時はしびれましたね。当時私は多くを語らず、背中で見せれば良いと思っていました。ただし、それでは良くなかったんですね。やはりコミュニケーションが大切。そのことを社会人になる前に学ぶことができました。これは親子の関係でもそう思うのです。喋って、伝えて、それで分かり合えるのだと。

現在の社員教育でも、『コミュニケーション』を一番に考えて、私が主導で行なっています。それはやはり『人』が一番大切だと考えているからですね。もちろんスタッフに対して、全て伝えますので、どこまで理解しているかは分かりません。でも『全てを伝える』ということが大切だと思っています。それは社員であっても、アルバイトであっても変わりません。

また伝え方に関しても、工夫していることがあります。それは、『強調する』ということです。

例えば、「すぐそこの通りで赤い車に友達が乗っていたよ」と言ったとします。話し手は、『友達がいた』というのを一番に伝えたいとしましょう。しかし言われた側は、『すぐそこの通り』を覚えている、『赤い車』だけ記憶に残っている、『友達』が印象に残っているということがあるんですね。なのでどんな情報になって記憶されているかも人それぞれです。『すぐそこの通り』が記憶に残っている場合、「すぐそこの通りで赤い車に乗った芸能人がいたよ」と間違えて認識しているかもしれません。これでは、伝えたいことが相手に伝わってはいません。

だからこそ『強調する』が大切だと思っています。

「今回は綺麗に揃えるのが大事だよ」とか、「今回はスピードが重要だよ」とか。何を強調するかはもちろん状況によって変わります。だからこそ伝え方が大切なんですね。伝え方が適切でなくて、指示された側が違うことをやってしまっていたら、これは指示する側の責任です。違うことをスタッフがやっていても、スタッフは全力でやってくれていますから。

 

従業員に対する想い

従業員には家族がいます。だからこそうちに勤めてよかったなと思ってもらえるようにしたいと思っています。そのための最低条件として、『安定して雇用する』というのがあります。会社が危険な状態にある、明日働けるか分からないといった状況では、日々の生活を守ることができません。

嬉しいことに一度勤めるとずっと働いてくれるスタッフばかりで、10年以上働いている人がほとんどです。だからこそ長年勤めてくれているスタッフを活かした店舗運営ができますし、コロコロとスタッフが変わることがないので、お客様目線で、「あのスタッフさんいないな…」みたいなことが少ないのではないかなと思います。

私は特別なことをしているとは思っていません。従業員一人一人とコミュニケーションをしっかりとる、社長であっても店舗にしっかりと出ることをしているに過ぎません。社長・社員・アルバイト関係なくフラットな関係でやっていきたいですね。私たちは小さな会社なので、社長自らなんでもやりますよ。掃除でも。こういうところは背中で見せたいですね。

〈メンズスタイル byオオニシ〉

 

大西代表のモットーとこれからの事業展開

私の人生においてのモットーは、『練習は不可能を可能にす』です。この言葉は慶應義塾大学の体育会出身者は全員知っている言葉です。小泉信三先生が言われた言葉で、本にもなっています。やはり練習を積み重ねることで、不可能だと思っていることは、可能になると思っていますね。

そしてこのモットーと同じくらい大切にしているモットーは『為せば成る』です。

会社経営をする中でもちろん苦しいことはありますが、『為せば成る』という想いを持って進んできたと思っています。この二つのモットーはとても大切にしていますね。

これからの事業展開は、苦しみの中生み出したビッグサイズの専門店『ビッグサイズストア』にて喜んでもらえる商品をもっと供給することだと思っています。やはりビッグサイズはバリエーションが少ないため、このバリエーションをもっと増やして、『あってよかったと言われる店になりたい』という店のコンセプトを実現させていきたいと思っています。

ゆくゆくは、自分たちの商品を作っていきたいですね。まだまだ自分たちが作れるレベルまではいっていませんが、それこそ『為せば成る』という気持ちで、うちのブランドの商品を作りたいです。

 

 

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